2015/10/10

UXという観点からコンテンツを考える

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uxdesign

先日、WCAN mini 2015 Vol.1「UXデザインプロセスを活用したコンテンツの評価方法」が名古屋で開催され、受講してきました。

講師は長谷川 恭久さん。
WEBサイトが提供するコンテンツを、数量評価ではなく、UX(ユーザー体験)という観点から評価し、「良いコンテンツ」を提供するための手法を講義とワークショップを通じて学ぶという内容のセミナーでした。
コンテンツ制作への取り組みとして、改めて気付かされることの多い有意義な内容でした。以下は、その備忘録です。

「良いコンテンツ」について考える

僕たちSEOに携わる人間に特に顕著なのですが、コンテンツが豊富に提供されていることが良いと評価されがちです。

「このサイトはページ数が多くて良いサイトだ」「文章量が多い良いコンテンツだ」など、「多いこと = 良い」という価値観が出来上がってしまっています。
そういった数量的観点でサイトの良し悪しを図るのは、僕たちがWEBに携わる人間だからです。

ですが、一般のユーザーはそういった数量的価値観でWEBサイトを評価しません。
ユーザーは、自分が求めている物を探し、理解し、目的を達成できるかという、「体験」を評価するのです。

セミナーの中で題材とされたユニバーサル・スタジオ・ジャパンのサイトは、非常に豊富なページ数で、その1つ1つのページ内容も十分にあり、「コンテンツ数」という観点からは非常に豊富なサイトでした。

「良いコンテンツ」について考える

ですが、「このサイトの中から○○について調べて見て下さい」とお題を出され、実際に調べてみると、所々に表記のゆれや重複コンテンツ等といった情報構造の甘さがあり、わかりづらい、必要な情報に辿りつけない、という結果になりました。

これは、「サイト内に素晴らしいコンテンツが掲載されていても、それがユーザーに提供が出来ていない」という状況があるということです。
それは本当に、ユーザーにとって良いコンテンツと言えるでしょうか?

「良いコンテンツ」の基準を作る

「良いコンテンツ」と一言で言っても、その「良い」の判断は人それぞれです。

  • 「今年はマルサラがトレンドなので」
  • 「クライアントがキャッチコピーにインパクト感を出したいそうです」
  • 「上司がこうだと言っているので」
  • 「テキストが豊富な方がたくさんのことが伝えられる」

こういった切り口で捉えていては、「良いコンテンツ」の基準がないために、一貫性のないサイトになってしまいます。
そうならないためにも、何が良いのかの基準を作る必要があります。

判断基準としてのペルソナ

ペルソナ
「良いコンテンツ」の基準には、ペルソナを用います。
ペルソナを用いることで、そのサイトに訪れる人物が「何を求めているのか」「どのように行動するのか」が明確化されます。
これを基準に、WEBサイトの制作を進めることで、実際のユーザーの現実との乖離がなくなり、制作のブレもなくなります。

ペルソナを作る際の注意点

  • 3人以上のペルソナを作る
  • 制作者・運営者にとって都合の良い人物像にしない
  • 勘や感覚で作らない

ペルソナは3人以上のデータを作ることが望ましいですが、かと言って多ければ良いというものでもありません。
ある程度、的を絞った人物像を設定する必要があります。

また、その人物像は「こういう人物が来て欲しい」といった都合の良い願望で作ってはいけません。
もちろん、プロジェクトにとって必要な人物像にフォーカスする必要はありますが、現実離れした願望は織り込まないように注意しなければいけません。

そして、大切なのが「勘や感覚で作らない」ということです。
しっかりとクライアントにヒアリングし、顧客情報の調査やアクセス解析といった調査も判断材料として取り入れます。

ジャーニーマップ

作成したペルソナを元に、ジャーニーマップを作成します。
長谷川さんのワークショップでは、紙と付箋紙を使って次のようなジャーニーマップを作成しました。

ジャーニーマップ

ジャーニーマップは作成したペルソナを想定し、「サイト訪問前」「サイト訪問中」「サイト訪問後」という時系列に分かれ、サイト訪問の前後も描かれます
記入内容は、それぞれのポイントごとの、「Doing-具体的な行動-」「Thinking-考えていること-」「Feeling-感じたこと-」を記入していきます。

このワークショップの題材となった名古屋市科学館のサイトでは、サイトの訪問前・訪問中・訪問後で次のようなユーザー体験が生じています。
当初、友人や雑誌、まとめサイトなどがきっかけとなって「行きたい!」という気持ちが生じていたものの、実際にサイトに訪れてみると「ワクワク感が伝わってこない」「アクセス情報がわかりづらい」といったマイナスの側面が見え隠れし、当初持っていたはずの「行きたい」という衝動が低下してしまっています。
最終的にはサイトから離脱し、別サイトで紹介されている内容で感動を得ることで気持ちが復活していますが、題材となったサイト内ではそれができず、画像内にもあるように「ふーん」という気持ちでなんとなく終わってしまっています。

ジャーニーマップを元にしたコンテンツ案

ジャーニーマップを通して、「今足りないもの」「伝わっていないもの」が見えてきました。
これを元に、実際のWEBサイトでどうするべきかを考えていきます。

ワークショップ内で作成した改善案
改善案

今回のワークショップでは、既に公開されているサイトが題材なので、「既存コンテンツの改善」と「新規コンテンツの追加」という2点を考えました。

この際、1つ1つの改善案には、優先順位付けを行います。
すぐに取り組めるもの、応急処置が可能な物は「優先度:高」といった具合にです。この場合は、紙面の上から下にかけての位置関係が優先順位としています。

また、それぞれの改善案が、ジャーニーマップ内の「Doing-具体的な行動-」「Thinking-考えていること-」「Feeling-感じたこと-」のどれに対応しているのかを明確化すると、問題と改善案の結びつきがわかりやすくなります。

ペルソナ・ジャーニーマップの「クオリティ」

ペルソナやジャーニーマップについてネットで検索してみると、それだけで一大作品の様な素晴らしいペルソナやジャーニーマップが出てきます。
ですが、そういった物は作ったこと自体で満足してしまいがちです。

現実問題として、1案件に対して制作に当てられる時間には限りがあるので、体裁部分に関しては簡素な物でも構いません。
もちろん、グラフィックソフトを使って美しく仕上げるのも良いですが、ワードやエクセルで簡易的に作るだけでも全く問題はありません。
大事なのは、ユーザー体験を把握ができるかどうかです。

実務への導入

僕の場合ですが、このセミナーの受講後、実際の案件で2件ほど、ペルソナとジャーニーマップの作成を行いました。
媒体として選んだのはGoogleスプレッドシートです。
Googleスプレッドシートを選んだのは、次のような理由です。

  • クライアントと共有することでクライアント自身が記入できる
  • クライアント自身が記入することで、クライアントのWEBサイトへのやる気を引き出せる
  • フォーマットの作成が楽で、時間的コストを削減できる

クライアントが入力に悩まないよう、若干の説明と作成例を付記して、クライアントとのデータ共有を行っています。

2件とも、今までのSEO対策でコンテンツ改善を長期に渡って続けていて、コンテンツ改善案の捻出に限界が見えていたところでした。
結果として、今までの手法では焦点に当てることのなかった点にも目が向けられ、新規コンテンツの作成に役立てることができました。

最後に

人によっては、UXはSEOに関係ないと思うかもしれませんが、それは違います。
Googleの傾向として、ユーザーに役立つより良い検索結果を表示できるように動いています。
良いコンテンツが評価される時代なのだから、そこにUXという視点を持つことはとても大切なことです。

今回のセミナーでは、ただ講義を聞くだけではなく、ワークショップで実際に自分で考えることができたので、とてもわかり易く、お陰で即座に実務レベルに落としこむことができました。
また次回、長谷川さんのセミナーがあれば是非参加したいと思います。

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